シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

A.I.

　ギィ、と音を立てて重そうなドアを開ける。

　数日前に来たばかりの場所だけれど、やっぱり幽霊でも出そうな雰囲気があった。

　寒さも前回より強い気がして、思わず身震いする。


　前回はギンと出会って、彼が魔女だと思ったんだっけ。

　でも噂の魔女が本当にギンのことなのかは分からない。

　噂になるほどギンがここに来ているのかもわからないし、もしかしたら魔女と言えるような存在が他にもいるのかもしれない。


　……その答えも、時計塔の上にあるのかな？


　なんて、金多くんのアドバイスを聞いた後では思う。


　とにかく、まずは鍵を返さないと。

　思い直して、まずは真っ直ぐ管理室へと向かう。

　また一応ノックをしてからノブに手をかけると……。


「……開いてる」

　鍵が閉まっているときもあるらしいけれど、管理室のドアは前回同様開いていた。

　本当にセキュリティ大丈夫なのかな？　なんて不安を少し抱きながら中に入ると、すぐに鍵を壁の元の場所と思われるところへ掛ける。

　そして、管理室から出てドアを閉めた。


　前はこの時点でギンの足音が聞こえたんだっけ。

　今回は振り子の音がするだけで、足音は聞こえない。


　わたしは緊張しながら螺旋階段に近づく。

　前回、ギンはこの螺旋階段をゆっくり下りてきた。

　つまりは、上で何かをしていたということ。

　それが何かは、行ってみれば分かるんだろうか？