シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 2人そろってキスに集中してた――つまりイチャイチャしてたとは言えず、ごめんと謝るしかない。

 例え言えたとしても、それはそれで怒らせるだけな気もするし。


「大体なんで時計塔に行ったのさ? 行くなって言われてたんじゃないの?」

「うっ……」

 痛いところを突かれた。

 前回も事情を話したら『断りなよ』なんて言った眞白だ。

 今回も事情を話せば同じことを言うに違いない。


 言おうか言うまいか迷っていると、眞白は少し黙って真面目な顔で続けた。

「……もしかして、時計塔の上にのぼったりしてないよな?」

「っ!」

 言い当てられてしまいドキリとする。

 正直に言うべきかどうか少し迷ったけれど、眞白はわたしのその反応だけで察してしまったみたいだ。


「はぁ……のぼったんだね。……ってことは、あれも見ちゃったんだ?」

 諦めのため息と苦々しい表情。

 どうしてそんな顔をするのかは分からなかったけれど、その様子からは眞白もキョウのことを知っているんだということが分かった。


「あれって……キョウのこと、だよね? あれって何なの? デジタルクローンって名乗ってたけど……」

 聞いて良いのかは分からなかったけれど、疑問をそのままにもしたくない。

「……兄さんは何て言ってた?」

 でも逆にそんな風に聞き返され、ギンの言葉を思い出す。
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