シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 管理室で眞白を待っている間に告げられた。

『キョウのことは、夜にちゃんと話す。だから今は眞白と先に帰ってろ』

 自分はまだやることがあるから、と。


 ギンは今なにをしているんだろう? とわずかな疑問を浮かべながら、彼に言われた言葉を告げる。

「ギンは、夜にちゃんと話してくれるって……」

「そっか。じゃあ、俺からは何も言わないでおく。あれは何て言うか……柚木家の恥部(ちぶ)とでも言うのか……まあ、柚木の人間じゃなくなった俺が話すことじゃないと思うし」

 困ったように笑う眞白に、わたしは「そっか、分かった」としか返せなかった。


 何にせよ夜にはギンが話してくれるんだ。

 そのときにちゃんと聞こう。

 そう、思った。

***

 夕食もみんなで食べて、一通りの片づけも終えたわたしはまずは自分の部屋のベッドにシーツと掛け布団をセッティングした。


 デリケートな話をするみたいだし、リビングじゃなくて部屋で話すことになるだろうと思ったから。

 で、もしギンの部屋で話すということになったら、そのまま流れで昨日と同じ状況に陥ることになってしまいそうだと判断した。

 だからちゃんと自分の部屋を寝れるようにして、こっちで話を聞いて、聞き終わったらギンには自分の部屋に戻って貰えばいい。

 そう思っての行動だった。


「よし、これなら大丈夫だよね」

 そう満足げに声を上げたわたしは、数時間後その考えが甘かったことを思い知るのだった……。
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