シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 そんなことを思い出していると、いつもリビングで聞こえているカタカタというキーボードの音が耳についた。

 こちらに背中を向けている三つ子を見て金多くんの言葉が蘇る。

『なんか怪しいウイルスソフトを作ってるって』

 この三つ子が作っているのが、そのウイルスソフトなのかな?


 ……いやいや、別にウイルスソフトって決まったわけじゃないし。

 あくまで金多くんからのまた聞きだし。


 変に疑いそうになるのを振り切るように視線をもとに戻すと、颯介さんと丁度目が合った。

 彼は三つ子をチラリと見た後、フッと私に笑いかける。

「あいつらが何のソフト作ってるか気になる?」

「えっその……」

 言い当てられてしまい言葉に詰まる。

 でも思っていたことを正直に話すわけにもいかない。


 だって、ウイルスソフト作ってるんですか? なんて聞いて、その答えが肯定だったらどうすればいいのか……。

 否定だったとしても気まずくなりそうだし。


 でも颯介さんは問い詰めるようなことはせず、「大丈夫」と軽い調子で言った。

「多分、ギンはそのことも話してくれるだろうから」

「え?」

「三つ子が作ってるソフトはキョウに関係あるからね」

「え? それはどういう――」


 ガチャ


 どういうことなのか、と問い詰めようとしたとき、シャワールームに続くドアが開いた。
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