シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 でも、ギンは特に気にしていないのかそのままゴクゴクとお茶を飲んでいた。

 上下する喉ぼとけがまた色っぽくて見惚れそうになる。


「てめぇは小学生のガキか!? ギンさんたちならそれ以上のこともしてんだろ」

 伊刈くんが岸本くんの頭をはたきながらそんなことを言う。

 そういうこと普通に言わないで欲しいな。

 否定出来ないから。


 突っ込むべきか迷っているうちにギンはお茶を飲み干してしまう。

 空になったペットボトルをテーブルに置き、颯介さんに視線を向ける。

「ソウ、これ捨てといてくれ」

「ほいほい」

 軽い了承の返事を聞くと、ギンの視線は流れるようにまたわたしに戻ってきた。

 その様子が流し目の様でドキリとする。


「上行くぞ、雪華」

「う、うん」

 少しずつ彼の色気にも慣れてきたと思うのに、やっぱりドキドキする心は変わりようがないみたい。

 魔法にかかったようなフワフワした感じはなくても、トクトクと高鳴る胸が彼に引き寄せられるように惹かれる。


 自然な流れで手を取り、引かれるままにリビングを出た。

 ドアが閉まる際また颯介さんのニヤついた顔が見える。


 今日も一緒に寝るんだろ? とでも言いそうな表情に、わたしは今日はそんなことにはなりませんよ! とばかりに笑みを返した。
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