シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「ギン、話はわたしの部屋でしない?」

 階段を上りながらわたしはそう提案をした。

「お前の? でも何もないだろ?」

「ベッドは寝れるようにしたから大丈夫!」

「……お前、それ誘ってんの?」

「へ?」

 昨日の流れでわたしは自分の部屋で寝るから、という意味で言ったつもりだったんだけど……。


「っぅあ! そ、そういう意味じゃ――」

「まあいいか、行くぞ」

「っ!」

 言い訳の言葉もあしらわれ、先を進むギン。

 手を引かれながら、わたしは自分の失態に顔をこれでもかと赤くさせていた。


 わたしのバカ!

 話は部屋で、と言って続けてベッドの話なんかしたらそういう風に取られてもおかしくないでしょう!?


 反省の意味も込めて自分を責めているうちに3階についてしまう。

 ギンは自分の部屋のドアを通り過ぎ、隣のわたしの部屋のドアを開ける。

 そうして2人で部屋に入り、わたしは早くも計画にミスがあったことを思い知った。


 ……椅子も1つくらい用意しておけばよかった。


 部屋の中に座れるような場所がベッドしかないことに気づき思う。

 まさか床に座ってとは言えない。

 逆にわたしが床に座ればいいのかも、と思ったけど……。


「ほら、お前も座れ」

 と隣の位置をポンと叩いてうながされてはそこに座るしかない。
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