シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 結果、緊張しながらもギンの隣に……ベッドに横に並ぶように座る。

 嫌でも意識してしまう状況に、わたしは自分の指をせわしなく絡ませた。

 ギンは何かを考え込んでいてすぐに話し出さない。

 それがまた緊張を強めていた。


「……雪華」

 数十秒の沈黙の後、ギンが少し硬い声でわたしを呼ぶ。

 隣を見ると、怖いくらい真剣な目とかち合った。


「どうして時計塔の上にのぼってきた?」

「っ!」

 キョウのことを説明してくれるというから、まさかそこから質問されるとは思っていなかった。


「時計塔では俺のことを知りたいからだって言われてつい浮かれてしまったけどな……そもそもどうしてあそこに俺に関わるものがあるって知ったんだ?」

「それは……」

「3日前に会ったときも俺は上から下りてきたところだったから、何かあるとは思われてもおかしくはないけどな……でもそこまで重要なものがあるなんて分からなかったはずだ」

 なのに、なんでのぼってきた? ともう一度聞かれる。


「それは……金多くんに聞いて……」

 隠すつもりはなかったから素直に答えた。

 ただ、どこまで話せばいいのか迷って……金多くんに自分の家に来ないかと誘われたことだけを黙って全部話してしまう。
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