シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「……金多か……」

 余計なマネを……といら立ちを込めて呟く。

 そんなギンにわたしは気になっていたことを全部ぶつけた。


「ギン……優姫さんと付き合ってたとかいう話はどういうこと? 金多くんは嘘だって言っていたけど。……あと、三つ子に作らせてるソフトって本当にウイルスソフトなの?」

 信じたくても、信じきれなかったこと。

 でも、ギンが悪いことをするとはやっぱり思えなかった。

 彼の口からちゃんと聞ければ、きっと信じられる。

 そんな確信を込めて、聞いた。


「……優姫のことは……そういうことにしてくれって頼まれたんだよ」

「え?」

 そういうことにしてくれって頼まれた?

 ということは、やっぱり本当は付き合ってなんかないってこと?


「妹みたいに思ってた幼馴染の頼みだし……その代わりにお前を気にかけてやってくれって頼めたからな。金多の前でキスするフリくらいまではしてやったんだよ」

「……わたし?」

 そのやり取りの話にわたしが出てくるとは思わなくて聞き返す。


「ああ……お前が学園で孤立してしまってたのは知ってたからな。せめて気にかけてくれる相手がいればいいと思って……悪い、気を悪くさせたか?」

 まさか優姫さんがよくわたしを気にかけてくれていたのはギンに頼まれていたからだったなんて……。
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