シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 金多くんは明るめの茶髪に茶色の目をしていてまさに王子様といった雰囲気の優しそうなイケメンだ。

 2人連れ立っていると美男美女で本当に絵になる。


「優姫さん、おはよう」

「おはよう、雪華ちゃん。昨日はありがとうね。問題なかった?」

 お礼と心配の言葉に一瞬グッと言葉に詰まる。


 問題は……まあ、あったよね。

 でも魔女に会ったなんて言っても信じてもらえるか怪しいし、何よりその魔女にキスされたとか普通に言いたくない。

 結果。


「うん、大丈夫。何もなかったよ?」

 笑顔で誤魔化した。


「そっか、良かった」

「ああ、友達に頼んだって雪華さんのことだったんだ。ごめんね? でも助かったよ、ありがとう」

「え? いやいや、そんな大したことじゃないし」

 隣にいた金多くんにまでお礼を言われて恐縮してしまう。


 そんなわたしたちの会話に近くにいた眞白も加わってきた。

「ああ、義姉さんが昨日時計塔に行ったのって優姫さんに頼まれたからだったんだ? 災難だったね」

 昨日わたしが保健室のお世話になったことを言っているんだろうけれど、そうなった経緯を詳しく話したくないわたしとしては余計な言葉だった。


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