シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「まあ、ほとんど思い込みに近いだろうがな……。でも、金多は完全にキョウの歪みに影響されてる。これ以上放っては置けねぇからな、キョウを消すしかねぇんだ」

「……それで消えてくれとか言ってたんだ……」


 聞いた瞬間は女の子に酷いことを言うなんて、と思っていたけれど……。

 その相手が歪んでしまったデジタルクローン。

 しかもそのAIに影響されて金多くんがさらにおかしくなっていってる。

 ここまで来ると、消えて欲しいと思うのも納得だった。


 ……何より、去り際に見たキョウの妖しい笑み。

 微笑みは人間らしさがあったけれど、その目はどこまでも機械的で……純粋に怖かった。

 あの目を思い出すと、何か嫌な予感がしてたまらなくなる。


 視線を落としキョウに対する怖さに耐えていると、ギンの腕が背中に回り肩を抱かれた。

 グッと引き寄せられる。


「……怖がらせたか?」

「……ううん、大丈夫」

 労りの眼差しと彼の体温に、わずかにこわばっていた体が緩んだ。


「キョウの存在は祖父さんも知っててな。祖父さんは基本がアナログ人間だからか時計塔を取り壊せば事が収まると思ってる節がある」

「取り壊す!?」

 突然の力技に思わず声を上げて驚いた。
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