シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「でもそんな事したってクラウドサーバーとかに逃げ込まれたら意味がないし、逃げられたら今度は何をしでかすか分かったもんじゃねぇ」

 だから、とギンは怖いくらい真剣な顔で続ける。

「俺が何とかするって言ったんだ」

「ギン……」

「祖父さんから提示された期限は俺が学園にいられる今年度の3月……いや、実質2月か。それまでに何とかしないと時計塔を取り壊すと言われた」

 2月と言ったら、あと4ヶ月。

 まだ時間があると取るべきか……。


「キョウから取り返したいものもあるからな。取り壊すなんて強行手段を取られたらそれも消えて無くなる」

 そういう意味でも困るんだ、と語った。


「だから、キョウ専用のウイルスソフトを作ってるんだ」

「あ……」

 そうか。

 そこで繋がるんだ。


 金多くんの言った通り、ギンはウイルスソフトを作っていた。

 でもそれは、犯罪に手を染める為じゃない。

 歪んでしまった母親のデジタルクローンを消すためのもの。


 ……うん、やっぱりギンは悪いことをするような人じゃない。


「でもそのソフトを作るために人材集めから始めるしかなかった。祖父さんはキョウの存在を表ざたには出来ないからって柚木商事関係の人間は使うなって言うし……。この建てたばかりのシェアハウスだけは拠点として貸してくれたけどな」

 全く不親切な、と愚痴る様は親族への気安さがあった。
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