シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 ギンってお祖父さん相手だとこんな風に愚痴ったりするんだ……。

 珍しい一面を見れたような気分になって、ちょっと嬉しかった。


「表ざたにはするなって言われたからには大々的に募集するわけにもいかねぇし……かといって犯罪に手を染めてるような奴使うわけにもいかなかった」

 結果として、暴走族だとかその辺の不良とか……際どい所から人材をスカウトしてくる――というか、奪って来るしかなかったんだとか。


 そうして恨みを買ってしまったり、逆に慕われて付き従ってくる人が出来たりってなったわけか。


「《黒銀》関係で銀髪のウィッグつけてるのも、ギンと名乗って本名を隠してるのも、俺が柚木家の人間だってバレないためにやってることだ」

 柚木家の跡取り息子が、暴走族や不良行為をしているなんていいスキャンダルだからな、と苦笑するギン。


「そっか、そうだよね」

 柚木家の人間がどうして暴走族なんてやってるんだろうと思っていたけれど、そういった経緯があったんだ。


 ある程度は颯介さんたちから聞いていたけれど、柚木家の事情も知るとまたよく分かった。


「……あと聞きたいことはあるか?」

 肩を抱かれたまま、覗き込むように聞かれた。

 切れ長の目が少し下から覗き込むような形になって、トクリと心臓が優しく脈打つ。


 ああ、好きだなぁ。


 自然とそう思った。
< 166 / 289 >

この作品をシェア

pagetop