シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「うん、まあそれは……こんな風に食事の準備を進んでしてるくらいだから大丈夫だとは思ってたけど……」

 苦笑気味に言われる。

 わたしはその苦い笑いをスルーして、言葉を選ぶように続けた。


「ギンのことも……ちゃんと好きだよ」

 昨日ハッキリと自覚した想い。

 それを思い出して思わず微笑む。


「最初は色気に当てられてるだけじゃないのかなとか思ってたけど……ギンのことを知って、好きだなぁって自然と思えたの」

 だから、わたしはギンが好きだよ。

 と、繰り返した。


 そんなわたしに「そっか」と笑みを返した眞白は、少しふざけた様子で話し始める。

「でもなんかさみしーな。義姉さんに兄さんを、兄さんに義姉さんを取られたような……複雑な気分」

「そう?」

 言いたいことは何となく分かるけれど、実感が(ともな)わないのでイマイチピンとこない。


 眞白に彼女でも出来たら分かるかな? なんて考えていると、「でも良かったよ」と眞白は安心したように笑う。

「兄さんはずっと義姉さんを欲しがってたからね。7年前、桔梗母さんのことで落ち込んで戻ってきた俺に『俺が初めて本気で欲しいと思った子だ。一番近くにいるお前が俺がいない間守ってくれよ?』って頼むくらいだからね」
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