シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
***

「あの、さ。わたしたちって……その、恋人同士ってことで、良いのかな?」

 いつもの流れでギンの部屋に連れ込まれ、先にベッドに腰掛けた彼にそう聞いた。

「は?」

 ギンはいぶかしげに眉を寄せ、少しの間そのまま固まる。


 眉を寄せた状態でも美しい彼は、そうしていると芸術品のようにすら見えた。


「何? 今日は素直について来るなぁと思ったら……それ聞きたかったのか?」

「あ、うん。その……わたし、ギンの彼女だって言ってもいいのかなって思って……」

 何となく照れながらそう言うと、フッとギンの表情が緩む。


「……来いよ」

 片手を上げて誘われて、魅了されたわけでもないのにフラフラと近づいた。


 ううん、ある意味魅了されているのかも。

 来いよって言われた途端心臓がドキッと跳ねて、カッコよさに見惚れてしまったんだから。


 近づいたわたしの腕を掴んだギンは、そのまま引き寄せてその硬い胸の中に閉じ込める。

 額の辺りにチュッと唇を落とすと、愛し気に囁いた。


「俺は、お前の彼氏だと思ってるけど?」

「っ!」

「だから、雪華は俺の彼女だろ?」

 当然だろう? と、かすかな笑い声と共に触れるだけの甘いキスが降ってくる。
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