シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

　そういえば《黒銀》って普段は何をしてるんだろう？

　わたしを守るために恨みを買っている族の人たちを監視しているっていうのは聞いたけれど……。

　数日前まではそれが普通じゃなかったはずだ。

　守って貰っておいて、わたしは《黒銀》のことをよく知らないと気付く。


「颯介さんに聞けば教えてもらえるかな？」

　そんなことを独り言(ご)ちながら、わたしは後片付けを進めた。

＊＊＊

　ピンポーン

　と、呼び鈴が鳴ったのは午後も３時を過ぎた頃だ。

　みんなが帰ってきたのかもと一瞬思ったけれど、みんなはわざわざドアホンを鳴らしたりしない。

　不思議に思ってテレビドアホンを見ると、思わぬ人物の姿に驚く。

　通話ボタンを押すこともなく、わたしは玄関へ急いだ。


　すぐに鍵を開けドアを開く。

　驚きのままその人の名を呼んだ。


「優姫さん、どうしたの!?」

　少し思いつめたような硬い表情の彼女は、いきなりドアが開いたことに驚いたのか少し面食らっていた。

　でもすぐに硬い表情に戻し、「丁度良かったわ」と呟くとわたしの腕を掴んで引っ張る。


「え？　優姫さん？　ちょっと、どこ行くの!?」

「あたしの家に来て」

「ええぇ？」

　突然すぎる行動にわたしはどうしていいのか分からなくてそのまま付いて行きながら理由を尋ねた。