シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「優姫さんの家に行って何をするの？　わたし、まだやることがあるから早めに帰りたいんだけど……」

「帰る必要はないわ。そのままあたし家に住んでちょうだい」

「は？」

　予想外の言葉に流石に足を止める。


「ちょっと！」

　珍しくイラついてわたしを睨む優姫さんに戸惑いながら、問い詰めた。

「どういうこと？　わたしギンから何も聞いてないよ？」

「そうでしょうね。あの人には内緒でしてることだもの」

　全く悪ぶれずに言ってのけた彼女は、さらに強くわたしの腕を掴んで引っ張ろうとする。

　でもわたしはそれを振り払う。


「内緒ならなおさらダメだよ！　それにわたし今日はシェアハウスから出ちゃいけないことになってるし……」

　眞白に念を押されたのを思い出し告げるけれど、優姫さんにはそんなこと関係なかったらしい。


「そんなのどうだっていい！　とにかくあなたがあそこを出てくれなきゃ困るの！」

「どうして――」

「あなたが彼の近くにいる限り、金多は何を言ってもあなたを彼の一番だと思ってしまう。それが事実でも、引き離さないことには違うとも言えないわ」

　だからあたしの家に住んでちょうだい、とまた腕を引かれる。

　強い力とその必死さに戸惑い、また足を進めてしまった。
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