シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 付いて行きながらも現状把握のために頭は働かせる。

 わたしをギンから離そうとしている?

 わたしがギンの一番じゃないと金多くんに証明するため?


 一昨日彼らの別れ話を立ち聞きしてしまったときのことを思い出す。

 確かに、あのとき優姫さんは証明するとか言っていた。

 そのための行動を今起こしてるってことか。


 ……でも。

「どうしてそこまで金多くんにこだわるの……? あんな別れ話されてたのに……」

 しかもその直後に、わたしを自分の家に誘うような人だ。

 キョウのせいで色々おかしくなっているのだとしても、良い印象は抱けない。


「え? なんでその話知ってるの……?」

 わたしの言葉に今度は優姫さんが戸惑い足を止める。

 その反応を見てしまったと後悔した。


 そうだった。

 あのときわたしが立ち聞きしてしまっていたことを優姫さんは知らなかったんだ。

 気まずい思いが沸き上がるけれど、口から出てしまったものは戻せない。

 わたしは正直に伝えるしかなかった。


「……ごめんなさい。わたしあのとき丁度時計塔に向かっていたところで……」

 だから立ち聞きしてしまっていたんだと話す。

「……」

 優姫さんは渋い顔をして少し黙っていたけれど、「まあいいわ」と気を取り直して話し出した。
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