シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

　その必死さには出来るなら応えてあげたいと思う。

　でも、それでもわたしはギンから離れたくはない。

　申し訳ないけれど、と断りの言葉を伝えようと口を開いた。


「優姫さん……ごめんなさい。それでもわたしは――」

「んっんー？　なーんか騒がしいと思って来てみたら……ピンゴだぜ」

「しかもかなり美人な子もいるじゃん。一緒に連れて行っちまおうぜ」

　わたしの言葉にかぶせるように、突然数人の男達が現れた。

　３人ほどの明らかにガラの悪そうな男達。

　嫌な予感に、すぐに逃げなきゃと思った。


「優姫さん、早く行こっ！」

　彼女の手を取って逃げようとするけれど、３人が向かってきたのとは別の方からもガラの悪い男がもう１人現れる。


「おー、本当だ。こいつだよ。この女。可愛い系の方」

　後から来た方の少しチャラめの男が何かと見比べながらわたしを指差す。

「な、なによ……」

　怯みながらも優姫さんが聞き返すけど、男たちはニヤニヤと笑って近づいてくるのみ。


　囲まれた状態で逃げようにも逃げられず、わたしと優姫さんは自然と身を寄せ合うようにしていた。