シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
　それでも、少しでも活路を見出したくて考える。


　そうだ、優姫さんだけでも……。


「こ、この子は関係ないでしょ？　連れてくのは、わたしだけにして……」

　震えそうになる声を頑張って抑えながら、主張する。

　こんなガラの悪い人たちに１人で連れて行かれるなんて、怖くてたまらない。

　でも、優姫さんを逃がすことが出来れば助けを呼んで来てもらえる。

　いくら優姫さんでも、この状況で助けも求めずわたしを見捨てるなんてことはしないだろう。


「せ、雪華ちゃっ……」

　心配そうな目を向けてくれている彼女なら絶対に助けを呼んで来てくれる。

　そう、確信したのに……。


「ああ？　関係ないとか知るかよ」

「そうそう。丁度女切らしてたんだ、俺たちの相手してもらうさ」

「良いっすよね？　中嶋(なかじま)さん」

　中嶋と呼ばれたチャラめの男は、ニヤリと笑って「当然だろ？」と３人に返す。


「クソ野郎の女は総長が味見したいとか言ってたからな。その間その子に俺たちの相手してもらおうぜ？」

「なっ!?」

　優姫さんは関係ないのに、彼らの都合だけで一緒に行くことが決められていく。

　しかも彼女の意志なんてまるで気にしていない。
< 190 / 289 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop