シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
***

 連れて来られたのはひと気の少ない倉庫。

 日も落ちてきて、中はすでに薄暗い。

 奥の方だけライトが点けられ明るかった。


「じゃあ俺はコイツ連れてくから、お前ら先始めるんじゃねぇぞ?」

「へいへい、分かってますよ」

「最初は中嶋さんなんでしょ?」

「早く行ってきてくださいよ」

 奥にはいくつか座れる場所があり、彼らはそんなやり取りをするとわたしと優姫さんを引き離した。


「っあ……」

 お互いに(すが)るようにくっついていたため、離されただけで物凄く心細く感じる。

 でも、だからと言って彼らの(かん)(さわ)るような真似をすれば何をされるか分からない。

 このままでも身の危険は確実だけれど、だからと言って抵抗するのもためらわれた。


 お互いに不安そうな、心細そうな視線を交わしながら別々の男に腕を引かれる。

 共に寄り添って泣き叫びたい衝動を必死でこらえた。


 中嶋はわたしの左手首を掴んで引くと、更に奥にある階段を上り始める。

 鉄製の階段をカツンカツンと音を立てて上りながら、中嶋はわたしに語りかけた。


「オトモダチが心配か? 自分の方が酷い目に遭うかもしれないってのに」

「っ」

杉浦(すぎうら)――俺らの総長はかなり嗜虐的(しぎゃくてき)だぜ? しかもあんたはあのクソ野郎の女だ。どれだけ酷い味見をされるのやら……」

 そうして、彼はクツクツと喉を鳴らすように笑う。
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