シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 一緒になって落ちていったギンに今度は別の意味で息を呑み、わたしは急いで部屋を出る。

 手すりに身を乗り出して下を見ると、真下にはマットのようなものがあった。

 痛みはあるかもしれないけれど、大怪我をしそうな状態じゃないことにホッとする。


 ギンは更に奥――倉庫の中央寄りにいる中嶋たち4人の方へ杉浦を投げ飛ばした。


 中嶋たちの相手をしていたのは多分《黒銀》のメンバーの人たち。

 シェアハウスの顔ぶれは見えないから、幹部以外の人たちだろう。


 《黒銀》メンバーの方が人数は多いのに、中嶋たち4人に劣勢みたいだった。

 でも、杉浦が投げ飛ばされて行くと一気に情勢が変わる。

 ギンが、そちらへ行ったから……。


 しなやかなクロヒョウは、その長身からは考えられない素早い動きで敵を(ほふ)る。

 その動きはちゃんとした格闘技を習ってきた人のものだけれど、でも柔軟性があって色んな攻撃に対応していた。


 強い。


 ただ純粋にそう思い、惹かれた。

 あそこにいる《黒銀》のメンバーもそうなんだろう。

 このギンの強さに惹かれ、憧れて、そうしてついて来た人たち。
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