シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する

「颯介さん！　優姫さん！」

　呼びかけると、ギンたちの方を見ていた颯介さんがこちらを向く。

「ユキちゃん！　良かった、無事そうだね。変なことされてないかい？」

「はい、ギンが助けてくれたので……。あ、来てくれてありがとうございます。三つ子たちすぐに気づいてくれたんですね」

　わたしの顔を見て安堵した颯介さんに、お礼を伝える。

　すると苦笑いが返ってきた。


「すぐに気づいたかは微妙だけどね……。でも気づいてからは早かったよ」

　と、わたしがシェアハウスを出てからのことを説明してくれる。

「ユキちゃんテレビドアホンの通話押さずに出ただろ？　おかげでそこの優姫ちゃんに連れて行かれたところもバッチリ録画されてて、すぐに三つ子は優姫ちゃんのスマホのGPS特定してさ、ここに連れて行かれてるみたいだって俺たちの方に連絡くれたわけ」

　そっちが徒歩だったから助かったよーと笑顔で言うので、何だか本当にもう大丈夫なんだなと思えた。

　ホッとすると、今度は優姫さんが心配になってくる。


　わたしはギリギリ何もされていないけれど、優姫さんは大丈夫だっただろうか？

「……優姫さん？　大丈夫？」

　床にへたり込むように座っている彼女にゆっくり話しかけた。