シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
　そんな２人を見送っていると、そっと優しく肩を抱かれる。

「俺たちも行くぞ」

「うん……」

　彼の体温を感じるところがとても熱くなった。


　７年前のことをちゃんと思い出して、さっきからずっと胸がドキドキしている。

　ギンに今すぐ伝えたい。
　彼の名前を呼びたい。

　でも、みんなの前で呼んでいいのかも分からなくて鼓動を抑えるのと一緒に口も閉ざした。


　早く２人きりになりたい。

　そう思いながらシェアハウスへと帰る。


　帰ってリビングに入ると、三つ子がいつものようにカタカタとキーボードを打っていた。

　その様子が本当にいつもの風景で、ああ、帰ってきたんだな……って肩の力が抜ける。


　ここに来てまだ一週間も経っていないのに、色々と濃密な時間を過ごしたせいかわたしにとってもここが家になっていたみたい。

　家に帰ってきたという安心感に、元気も取り戻してきた。


　そうなると、時間的にもお腹が空いて来る。

「ギン、わたし夕飯の支度するね」

　そう言ってキッチンに向かおうとしたけれど止められた。

「バカ、お前は休んでろ」

　簡単なものなら俺でも作れると言ってギンがキッチンへと行ってしまった。
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