シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
＊＊＊

　食事が終わると、片づけはわたしが名乗り出た。

　ギンにはまた休んでろと言われたけれど、何かしていないと落ち着かないと言ってやらせてもらう。


　ギンにドキドキして落ち着かないだけだったんだけど、その瞬間だけ少し辛そうな顔をした彼を見ると別のことを思ったのかもしれない。

　誤解を解こうと思ったけれど、口を開く前に「じゃあ先にシャワー済ませてくるな」と言ってダイニングから出ていってしまった。

　仕方ないからあとでちゃんと話そうと思い、わたしは片づけを始める。


　そうして片づけも終え、ギンと入れ替わるようにシャワーに入ると鎖骨にあるキスマークに目が行った。

　杉浦なんかに触られなくて本当によかった。


「わたしはギンの――彼の彼女だから……」

　大切な思いを嚙みしめるように、そう呟いた。


　そうしてリビングに戻ると、みんなは揃って真剣な様子で三つ子のPCを睨んでいるところだった。

　少しピリピリとした緊張感に、わたしは邪魔にならないよう静かにドアを閉める。


「……どうだ？」

　静かに、重く三つ子に問いかけるギン。

　カタタタタッとキーボードを鳴らし、彼らは答えた。
< 212 / 289 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop