シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 そうか、だからギンは時計塔に来るなと言っていたんだ。

 そう納得しながらギンと三つ子の話の続きを聞いた。


「杉浦が会合の日を知っていたのは?」

「それもキョウだね」
「普段なら会合の日を知られただけなら大した問題にならなかったから……油断してた」
「タイミングが悪かった……いや、それも狙ってのことかも」

 なんて分析しながらも三つ子はまたキーボードを打ち始める。


 ギンはそれも予想出来ていたのか、はぁ……と重いため息をついたものの驚きはないみたいだった。

 ただ……。


 ドンッ!


「あんのクソA.I.!」

 壁を思い切り殴り、聞いたことが無いほど低い声で悪態をつく。

 それだけで彼がどれほどの怒りを覚えたのかうかがい知ることが出来た。


 怖いほどの怒り。

 でも、そんな姿ですら惹かれる。

 ううん、むしろもっと……。


 鼓動が大きく早くなっていく。

 自分でも抑えようのない思いと鼓動に戸惑っていると、ギンがわたしの存在に気づきフッと怒りをしずめた。


「雪華……シャワー終わってたのか……」

 近づいてきて、手が伸びてくる。

 何故かその手が一瞬止まり、最終的には肩におりてきた。
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