シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「おーい、俺たちもいるんですけどー?」

「っ⁉ だからお前は! そういう野暮なこと言うとぶん殴られるぞ⁉」

 先にドアの外でシロガネを待っていた岸本くんと伊刈くんがいつの間にかこっちを見ていた。


「っ⁉」

 み、見られてたの⁉


「瑛斗、後でゲンコツな」

 シロガネは目を細め冷たい眼差しを岸本くんに送る。

 それだけで岸本くんは「ひぇっ!」と悲鳴を上げ両手で頭のてっぺんを押さえた。


「勘弁してくださいよ! ギンさんのゲンコツマジで痛いんっすから!」

「自業自得だ」

 泣きが入っている岸本くんに、伊刈くんはため息をはきつつ見捨てる言葉を放つ。


「あははは……」

 そんな2人を見ながら呆れ気味に笑うと、シロガネがもう一度わたしを見て今度は頬にキスをする。

「じゃあ、行ってくるな」

「うん、行ってらっしゃい」

 そうしてわたしも彼の頬にキスをした。


 ……人前だとちょっと恥ずかしかったけれど。


「あー……俺も彼女ほしー……」

 羨ましそうにこっちを見る岸本くんを伊刈くんが引きずるようにまたドアの外に連れ出し、シロガネも名残惜し気に外へ出ていった。


「行っちゃった……」

 呟き、しばらくドアを見ていたけれどいつまでもここにいたって仕方がない。
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