シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「ギンさんは懐が広いし」
「面倒見もいいし」
「みんなのお兄ちゃん」

「ははっ、確かに」

 彼らの会話にわたしも納得してしまう。

 でも、シロガネが聞いたらどんな顔をするんだろうな、なんて考えたらまたちょっと笑ってしまった。


「で、そのギンさんのためにこれを作ってるんだけど……」
「ちょっと行き詰まってる」
「白雪、なんか良いアイディアない?」

「ええ? そんなこと言われてもプログラミング言語とかはサッパリだよ?」

 授業で習った程度までしか分からないし。


「そんなの見てれば分かる」
「そういうのは期待してない」
「聞きたいのはもっと別のところ」

「あ、はい……」

 淡々と言われて押し黙り、聞く体勢を取った。


 3人の話は、簡単に言うとこうだ。

 キョウを単純に消すのならそこまで難しくはない。

 サブの方からハッキングしてウイルスを送り入れ、サーバーに保存してあるデータも一括消去すれば事足りる。

 ただ、そうやってすべてを消してしまうとシロガネが取り返したいというものが手に入らなくなるんだそうだ。


「その取り返したいものを手に入れるために、一番初めの部分だけは残さなきゃならない」
「でも残そうとすると慎重に進めなきゃならなくて……」
「結果消す前にブロックされてしまう」

『お手上げ』

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