シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
五章

歪形

「義姉さん、本当にもう大丈夫なの?」

 翌日の朝、眞白と登校中にそう心配される。

「大丈夫だって。昨日休んだのだってシロガネに言われたからっていうのが大きいもの」

 体調に問題はないし、精神的にもシロガネのおかげで嫌な記憶は塗りつぶされている。


 圧し掛かられた恐怖はまだ完全に忘れることは出来ないけれど、それでもその後のシロガネとの甘い時間が恐怖を塗りつぶしていってくれてるから。

 だから、わたしは大丈夫。


 ……でも、そうなると優姫さんが心配になった。

 金多くんに会いたいと泣いていた彼女。

 別れ際は笑顔を見せてくれたけど、大丈夫なわけがない。


 学校、来てるのかな……?

 来ていたら、ちょっと様子を見てみなきゃ。


 そう思っていたんだけれど……。

 教室に優姫さんの姿はなく、始業時間になっても来る気配はなかった……。


***

 お昼休みになると、わたしは「はぁ……」と思わずため息が出る。


 ハッキリ言って午前中の授業は身が入らなかった。

 シロガネのこと、キョウのこと、優姫さんのこと、金多くんのこと。

 色んなことを考えてしまって……。


 今もお弁当を広げようと取り出したところで止まってしまう。
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