シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「そういえば、梶白さん優姫のこと何か知らない?」

「え?」

「優姫、昨日も休んだんだけど……電話したら体調崩しただけって言ってるわりに明らかに気落ちしてるみたいで……」

 その言葉で優姫さんが今も全く立ち直れてないんだと分かった。


 でもそれも当然なのかもしれない。

 わたしはシロガネがいたから大丈夫と言えるくらいにはなったけど、優姫さんは多分金多くんに会えてすらいないんだろう。

 会えたとしても今の金多くんのことを思うと……逆にもっと傷つくことになりかねない。


 金多くんへの怒りが増した。


「梶白さん?」

「あ、ごめん。優姫さんのことはちょっと分からないや」

 一瞬彼女ならわたしより優姫さんに親身になってくれるんじゃないかと思ったけれど、優姫さんがなにも言っていないのなら知られたくないってことなのかもしれない。


 金多くんに別れ話されたことも、襲われたことも。

 どちらも変に噂されかねない事柄だ。

 友達とはいえ、話すのはためらわれたんだろう。


 だったら、わたしが言うわけにもいかないよね。


「そっか……」

 そう呟いた彼女はそのまま少しの間沈黙してから「あ、あとさ」とちょっと言いづらそうに声を掛けてくる。
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