シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「でも、兄さんはヤバい奴らに恨まれてるだろ? そのせいで君も襲われたんじゃないのか?」

 それは誰に聞いたのか。

 分からないけれど、それに優姫さんも巻き込まれたことを彼は知っているんだろうか。


「だからやっぱり兄さんのそばにいるのは危険だよ。俺のところにおいで」

 一見優しそうに話す金多くんにわたしの我慢も限界が来た。

 優姫さんはずっと一途に金多くんを想っているのに!


「そのヤバい奴らは警察に捕まったし、わたしがシロガネのそばから離れるなんてことはないよ。だいたい、少しくらいは優姫さんの心配したらどうなの?」

 いっそ怒鳴りつけたいと思うのを抑えて、睨みつける。

 すると、金多くんの顔から笑顔が消えた。


「何でそこで優姫の名前が出てくるのかな?」

「襲われたとき、優姫さんも巻き込まれたからに決まってるじゃない」

 言い放つと、彼の表情が本気で驚いたものに変わる。

 少なくともそれは知らなかったんだと分かった。


「一昨日、シェアハウスからわたしが優姫さんに連れ出されたところを見つかって捕まっちゃったの。優姫さん美人だから、そのまま一緒に巻き込まれて――」

「――なのか?」

「え?」

 わたしの説明の途中で金多くんは声を上げる。

 聞き返すと、強い力で両肩を掴まれた。


「優姫は、無事なのか!?」
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