シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 同じ質問をしてどちらが先に答えようかと数瞬迷っているうちに眞白が口を開いた。

「俺たちはキョウに捕まった兄さんを助けに来たんだ。優姫さんはどうしてここに?」

「っ! やっぱり……。あたしは金多から連絡があって……」

「金多くんから?」

 この間の様子だと会うどころか連絡もしないと思っていたから、それを聞いてちょっと驚いた。

 でも、その連絡は良い知らせではなかったみたいだ。


「良く分からないけど、今夜自分は罪を犯すかもしれないって。だから本当にお別れだ、みたいなメッセージを一方的に送られて……」

「罪ってどういう……」

「分からないよ。でも止めなきゃと思って……本人に連絡しても繋がらないし既読にすらならないし。だから家の方に連絡したの。そしたらまだ帰ってきてないって言うから、もしかして時計塔なんじゃないかと思って……」

 でもどうやって中に入ればいいのか分からなくてここでうろうろしていたんだそうだ。


「……まさか、その罪ってギンをどうにかするつもりなんじゃ……」

 颯介さんの呟きにまさかと思いつつ、完全には否定できそうにないことに気づいた。


 キョウを母親と重ねて執着している金多くん。

 大切な人だという優姫さんより優先するくらいだ。

 そのキョウを消そうとしているシロガネは彼にとって邪魔な存在でしか無いのかも知れない。


「何にしても急いだ方が良いみたいだな」

 硬い声で眞白がそう口にして、一緒に連れて行ってと言う優姫さんとフェンスを乗りこえ学園敷地内に入った。
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