シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「……ねぇ、母さん。聞いても良いかな?」
キョウを“母さん”と呼ぶ金多くんは、感情のこもらない声で質問を口にする。
「なぁに?」
「雪華さんに兄さんのそばは危険だって分からせるためにちょっと怖い目に遭ってもらうって言ってたよね?」
「ええ。思ったより早くシロが助けに行っちゃったから、そこまで怖い思いはしなかったみたいだけど」
「っ!」
息を呑み、声が出そうになる口を押さえる。
悪びれもなく口にした言葉は、あの合成写真や情報をキョウがばら撒いたのだという確かな証拠でもあった。
「……それに優姫が巻き込まれたらしいんだけど……母さんはどうしてか知ってる?」
「っ!?」
今度は優姫さんが息を呑んだ。
金多くんが彼女を気にしてるという事に驚いているみたいだ。
「もちろん知っているわ。雪華さんを連れ出してもらったからよ」
「え……?」
「あの子、雪華さんをシロから引き離そうとしてて、シェアハウスの正確な場所とか色々調べてたの。だから手伝ってあげたのよ?」
「それって……」
「ちゃんと連れ出しやすそうな日時もさりげなく教えてあげたの」
金多の大切な子だもの、親切よ? と、全く悪いと思っていなさそうな声。
実際思っていないんだろう。
キョウはあくまでA.I.だ。人間らしい心の機微まではデータとして入っていないのかも知れない。
キョウを“母さん”と呼ぶ金多くんは、感情のこもらない声で質問を口にする。
「なぁに?」
「雪華さんに兄さんのそばは危険だって分からせるためにちょっと怖い目に遭ってもらうって言ってたよね?」
「ええ。思ったより早くシロが助けに行っちゃったから、そこまで怖い思いはしなかったみたいだけど」
「っ!」
息を呑み、声が出そうになる口を押さえる。
悪びれもなく口にした言葉は、あの合成写真や情報をキョウがばら撒いたのだという確かな証拠でもあった。
「……それに優姫が巻き込まれたらしいんだけど……母さんはどうしてか知ってる?」
「っ!?」
今度は優姫さんが息を呑んだ。
金多くんが彼女を気にしてるという事に驚いているみたいだ。
「もちろん知っているわ。雪華さんを連れ出してもらったからよ」
「え……?」
「あの子、雪華さんをシロから引き離そうとしてて、シェアハウスの正確な場所とか色々調べてたの。だから手伝ってあげたのよ?」
「それって……」
「ちゃんと連れ出しやすそうな日時もさりげなく教えてあげたの」
金多の大切な子だもの、親切よ? と、全く悪いと思っていなさそうな声。
実際思っていないんだろう。
キョウはあくまでA.I.だ。人間らしい心の機微まではデータとして入っていないのかも知れない。