シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「……優姫にそういうことさせて、巻き込まれるって思わなかったの?」

「巻き込まれる確率は80.3%だったかしら? 19.7%は逃げられたはずだわ」

「っ! ほとんど巻き込まれる前提の状況じゃないか!?」

 声を荒げる様子にも、キョウはただ不思議そうに声を掛ける。


「金多? どうして怒っているの? 目的のためには雪華さんを連れ出してくれる人がどうしても必要だったのよ? わかるでしょう?」

「わからないよ! 何で優姫だったんだ!? 巻き込まないよう別れたっていうのに、どうして巻き込むんだよ!?」

 怒鳴る声に、優姫さんが今にも泣きそうな顔で「金多……」と呟いた。


 今日電話で話そうと思っていたこと。

 金多くんはちゃんと優姫さんのことを想ってるってこと。


 わたしが言わなくても、この彼らのやり取りだけで伝わっているみたいだ。


「聞き分けのない子ね。もういいわ、私にはシロがいるし」

「っ、あ……母さん……」

「私に見捨てられたくないなら、ちゃんと言うことを聞いて? 金多」

「っ!」

「ほら、ちゃんとケースに蓋をしてくれなきゃ。シロを冷凍保存できないじゃない」


「なっ!?」

 流石にもう、黙って様子をうかがうことなんて出来なかった。
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