シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 冷凍保存?

 シロガネを?

 どんな冗談よ!?


 思わず立ち上がり、ドアを大きく開けて中に入る。

 颯介さんも驚いているのか、止める必要はないと思ったのか。

 静止の声は掛からなかった。


 驚きの表情で振り返る金多くんに、前と同じ場所に映し出されているキョウ。

 そしてその奥のベッドに、前は無かった大きなガラスのケースが置かれていた。

 その中に横たわっているのは、無事でいてと願った美しい人。


「っ‼︎」

 まるで白雪姫のガラスの棺を連想させるそれに、ゾッとした。

「っシロガネ!」

 周りなんてもう見えない。

 一直線に彼が眠るベッドへと走った。


 上蓋が開いたままのケースに近づき、覗き込む。

 震える手を伸ばして頬に触れた。

 温かい。

 手を首筋に移し、確かに脈打っている事に安堵した。


 良かった、ちゃんと息してる。


「優姫? 雪華さんに、眞白まで……」

「金多っ!」

 ひとまず安心出来た事で、後ろでされる会話にも意識をやれるようになる。


「優姫……なんで来たんだ、お別れだって伝えただろ?」

 寂しそうな声に優姫さんが泣きそうな声で答える。
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