シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「金多を止めたくて……お別れなんてやっぱり嫌だよっ!」

「でも、俺は罪を……兄さんに危害を加えたんだ。今はまだ息をしてるけど、頭を思い切り殴ったから無事なわけでもないはずだ」

 そんな俺のことなんて忘れてくれ、と悲痛な声がする。


 頭を殴られた?

 それで意識が無いの?


「……シロガネ? ねぇ起きて?」

 触れる手を頬に戻す。

 規則正しく息をするシロガネ。

 作り物みたいに美しい顔に泣きたくなってくる。


 いつも隣で眠る彼を見て幸せを感じてた。

 でも、今は目を覚ましてほしい。

 その琥珀色の瞳に、わたしを映してほしい。


「目を覚まして、シロガネ。お願い、起きて……」

 今にも泣きそうな声でうったえても、目蓋は開かない。

 願うようにギュッと目をつむり、「シロガネ……」と呟いた。


「……キスで起こしてくれねぇの?」

「……え?」

 少しの間を開けて掛けられた言葉に、目を見開き改めて彼の顔を見る。

 ゆっくりと開かれた瞳に、わたしの顔が映った。


「ガラスの棺で眠る白雪姫は、キスで起こされるんだろ?」

 ニッと不敵に笑うシロガネはそんな冗談を言う。

 わたしは泣きそうになりながらも笑顔で答えた。
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