シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 なんだかんだ、シロガネはやっぱり“お兄ちゃん”なんだな。

 そんな優しい雰囲気に、キョウの高い声が水を差す。


「あーあ、残念。やっとシロを私だけのものに出来ると思ったのに」

 みんなの視線がキョウに集まった。


「お前はもういいから、消えろ」

 ため息交じりにそう言ったシロガネは、黙って成り行きを見守っていた颯介さんに視線を移す。

「ソウ、準備は出来てるか?」

「ああ、いつでも行けるってよ」

「じゃあ頼む」

 その言葉の後、颯介さんはまだ繋がっていたらしいスマホの電話で指示を出した。

「聞いたか? クロ、セキ、ハク、頼んだ」

『はいよ』

 電話の向こうの声がわずかにこちらにも聞こえる。


「なぁに? またイタズラするの? 良いわよ、何度だって受けてあげる」

 そう笑うキョウに、シロガネは冷たい眼差しを向けた。

「いいや、これで終わりだ。最後だよ、キョウ」

 告げると同時に、キョウの表情が変わる。


「え? 何? いつもと違う。処理が早い」

 サブをハッキングしてウイルスをダウンロードさせると聞いたけれど、もうハッキングは終わったんだろうか?

 白い布に隠れていた機材やPCらしきものの画面がチカチカとせわしなく光る。
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