シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 ふぅーと息を吐き、銀髪のウィッグを外した彼は「これももう必要無いな」とベッドの方へ放り投げた。

 前髪をかき上げ整える仕草に、こんなときだというのに見惚れてしまう。

 妖しくも美しい彼だけど、やっぱり何よりカッコイイなと思った。


「ん? どうした?」

「あ、うん……カッコイイなぁって思って」

「……」

 正直に思ったことをそのまま伝えると、一拍停止したシロガネはわたしの肩を抱き寄せもう片方の手で顎を捉えた。


「シロ――ぅんんっ」

 彼の素早い行動に静止の声をかける暇もなく、わたしの唇は奪われる。

 キスは後でと言っていたけれど、まさか今!?

 なんて思いながら驚いていたけどちょっと違ったらしい。


「っはぁ……こんなときに煽るな」

「え? 煽ってなんか……」

「俺はお前にカッコイイって言われるだけで嬉しいんだって言ったの忘れたのか?」

「……」

 ……忘れてた。


 黙り込むと、ジトーッとした目で見られる。

「忘れてたな?」

 それにも黙り込んで目をそらすと、今度はチュッと触れるキス。

「忘れてた罰は後でたっぷりしてやるからな?」

「え……?」


 いや、その……求められればぜんぶあげたいとは思っているけれど……罰をたっぷりとかはいらない、かな?


 ちょっと頬が引きつりそうになったけれど、その前に颯介さんから声が掛かった。
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