シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「ギン……イチャついてるとこ悪いけど、ダウンロード終わったってよ」

「ああ、分かった」

 呼ばれたシロガネはわたしの頭をひと撫でしてから離れていく。


 さりげないその仕草と、見られていた恥ずかしさで心臓がトクトクと早くなった。

 もう本当、好きすぎて困る。

 でも、だからこそ人前では控えて欲しいとも思う。



 わたしから離れたシロガネは、PC画面の辺りに向かうと何やら操作しだした。

 すると、無機質な機械音声が響く。


『パスワードを入力してください』

「……《愛しき者たちへ》」

 キーボードが見当たらないからか、音声入力でパスワードを入力している。


『パスワード《愛しき者たちへ》確認いたしました。《(つづ)る想い》のロックが解除されました』

 その音声が聞こえると、今度は色んな機材が置いてある場所に行く。

 その中の1つ。
 箱状のものの蓋を開けると、何かを取り出した。


「ったく、これを手に入れるためにとんだ苦労をさせられたぜ」

「……手紙?」

 悪態をつきながら戻ってきたシロガネが持っていたのは、数通の手紙と思われる封筒だった。


「ほら金多、これはお前宛てだ」

「え……?」

 差し出された手紙を受け取りながら戸惑う金多くん。
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