シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 お腹は空いているだろうけれど、夜も遅いし消化に良いものを。

 無難にうどんにでもしようかと思っていたらふと籠の中のリンゴが目に入った。


「確かリンゴも消化にいいよね? 切っておこうかな?」

 呟きながら手に取り、籠の中の残量を見る。

 このシェアハウスに来たときは山盛りにあったリンゴ。

 約1週間で一気に半分くらいになった。

 なのに今はそこからいくつか減っているだけ。


 このリンゴを食べているのは主にシロガネだ。

「最近食べてないのかな?」

 このままだと腐らせてしまうから、食べないならみんなで消費しないと。

 そう思って、先にシャワーを済ませてダイニングにきたシロガネに聞いてみる。


「あー、そうだな。多分前ほどは食べないだろうから、そうしてくれ」

 熱々のうどんに息を吹きかけながらそう言うシロガネに「分かった」と返す。

 すると、一緒にうどんを食べていた岸本くんが口を開いた。


「でもそういえばなんで食べなくなったんっすか? 前はあんなに食べてたのに」

「確かに最近丸かじりしてるとこ見ないっすね?」

 続けて伊刈くんも不思議がる。


「あー……まあ、今は雪華がいるからな」

「ん? どういうこと?」

 リンゴとわたしにどんな関係があるんだろうとわたしは更に疑問に思う。

 確かにリンゴは2人の思い出の品ではあるけれど……。

 なんて考えていると、とんでもないことを言われた。
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