シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「えっと、その罰ってどうしても受けなきゃダメ?」

 ただでさえ受け止めきれない想いに翻弄されるのに、他にもいっぱいいっぱいになりそうな要素は正直いらなかった。


「当たり前だろ? ちゃんと教え込まねぇと、また場所も考えず煽られそうだしな」

「うっ……」

 煽ったつもりはなかっただけに、またやりそうだと言われても否定できない。

 それに確かに人前で濃厚なキスとかされると困る。


「ううぅ……」

 罰は止めてと言いたいけれど、わたし自身ちゃんと理解しないと同じ事を繰り返しそうっていうのはある。

 その葛藤に困り果てていると、シロガネの目が優しくも妖しく細められた。


「雪華、諦めろ」

 ふっくらとした蠱惑的(こわくてき)な唇が言葉を紡ぐ。


「お前は俺の特別。俺が欲しいと思ったのは、後にも先にもお前だけ」

 その言葉は、わたしの心を絡めとる。


「俺はお前しか求めない。だから応じろ。全部受け止めろなんて言わねぇから、ただ、応じてくれ」

 その望みを、わたしは拒否できない。
 したくない。
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