シュヴァルツ・アプフェル～黒果～魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「え？　えっと……優姫ちゃん？」

「出来れば呼び捨てで！」

「いや、でも優姫ちゃんだってわたしのことちゃん付けじゃない」

「まあ、それもそっか」

　と、意外とアッサリ引いてくれる。


　そんなやり取りをしていると、優姫ちゃんは本当にもう大丈夫そうだなって思う。

　金多くんは色々こじれちゃったけれど、最後はちゃんと彼女を選んだし。

　あれだけ互いを想い合っているんだもん、２人で幸せになってほしいと思った。

＊＊＊

　シェアハウスに帰ると、リビングではまた三つ子がキーボードを叩く音が響く。

「ソフトの開発は終わったのにまだ何かやってるの？」

　と疑問を投げかけると、うんざりした声が返ってきた。


「今度は颯介さんに頼まれた」
「《黒銀》の人たちの就職先とかその他もろもろデータ化しておいてくれだって」
「人使いが荒い」

「……って言いながらもしっかりやるんだ？」

　文句を言いながらも手は止めない辺り、やっぱり三つ子はこういう作業をしているのが性に合っているんだろう。


「あー！　分かんねぇ！」

「……今更中学のおさらいとか、拷問だな……」

　ソファーの方では、岸本くんと伊刈くんがどこからか調達してきた中学の教科書を広げてうなっていた。
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