シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 小柄なおじいちゃん先生の水野先生は、ちょっと脅かしただけで大げさに驚き倒れてしまうくらいビビリな先生だ。

 確かにあの先生なら時計塔に行きたくないと思っていてもおかしくない。

 そして、そういう嫌なことはいつも生徒に押し付けるんだ。


「……そっか、優姫さん今日日直だったもんね」

 そのせいで頼まれちゃったんだ。


「優姫、これから彼氏とデートなんだって。ね、頼むよ。いつもグループ入れてあげてるでしょ?」

「もう、そういう言い方しないの!」

「あ、ははは……」

 率先して声を掛けてくれる優姫さん以外は大体こんな感じ。


 本当は入れたくないけど、優姫さんが言うから入れてあげてるっていうスタンスだ。

 今回のこの鍵の件も、きっと優姫さんが困っているけど自分たちも行きたくないから、わたしに頼めばいいんじゃない?って感じで決まったんじゃないかな?


 正直思う所がないわけでもないけれど、実際グループに入れてもらえて助かってる部分はある。

 それに、唯一ちゃんと気遣ってくれている優姫さんが困っているんだ。

 だったら強く拒む理由もない。
< 3 / 289 >

この作品をシェア

pagetop