シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「……はぁ」

 何かを諦めたかのような溜息をついた彼は、わたしから離れてジャケットのポケットに入れてあったらしいスマホを取り出す。


「……眞白?」

 呟いて、電話に出る。


 眞白からの電話?

 もしかして、説明の電話今かけてきたの?


 ちょっと遅いんじゃないだろうか。

 なんて不満に思いつつ彼の様子を見守った。


「なんだよ?……はぁ!? ああ……それで?」

 眞白の話に相槌を打っていたかと思ったら、突然「はぁ!? ふざけんなよ!?」と大きな声を上げたのでちょっとビックリする。

「お前ももっと早く言えよ!……いや、大丈夫だ。ああ、分かったよ」

 そうして電話を切った彼は、ベッドの方へ向かってスマホを放り投げると「はあぁ……」と大きなため息をついて腰掛けた。


 えっと……わたしはどうすればいいのかな?

 部屋、出てってもいい?


 戸惑い迷っていると、「雪華」と名前を呼ばれる。

「とりあえず抱いたりしねぇから、お前もここ座れ」

 その指示に数秒躊躇う。


 抱かないとは言ったけど何もしないとは言っていないし……それにそこベッドだし……。
< 46 / 289 >

この作品をシェア

pagetop