シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「来いよ」

 でも短く誘う言葉につい言う通りにしてしまった。

 まだ魅了の魔法にでもかかっているんだろうか?


 でも隣に座ったわたしに、すぐに何かをしてくる様子はない。

 むしろ虚空(こくう)を睨んで「あんのクソ親父……」と呟いていたので、とりあえず眞白はちゃんと説明してくれたんだな、と思った。


「はぁ……」

 怒りを吐き出すような溜息をついた後で、彼はその形のいい眉を寄せてわたしを見た。

「……親父が悪かったな」

「え!?」

 一瞬どうして謝られるのか分からなかったけど、彼にとって義父さんは実の父親だからか、とすぐに納得する。

 でも。


「あなたが謝ることじゃあ……」

 ない、よね?

「それと、知らなかったとはいえそんな状況の時に抱こうとして悪かったな」

「それは……」

 知らなかったなら、仕方ないんじゃないかな?

 わたしも抵抗してなかったし。


 今思えば、どうしてあれほどまでこの人の思うがままに行動していたのか……。

 やっぱり魔法でもかけられてしまったのかな?


 なんて、あり得ないことを本気で考えそうになる。


 でも、今も彼にどこか惹かれている自覚はあった。

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