シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
二章

名前

 ゆっくりと意識が浮上し、うっすらと目を開ける。

 少しぼーっとしながら、いつもとベッドの匂いが違うなと思った。

 そんな違和感の後、今度はなんだか重いものがわたしに乗っかっているような感覚。


 それが誰かの腕だと気づいたとたん、わたしは昨日のことを思い出した。


 そうだ。

 昨日はなんかもう色々あった。

 義父さんとの間に亀裂が入ったり、家にいない方がいいと眞白に言われて《黒銀》の幹部の住むシェアハウスに連れてこられたり。

 そこで魔女兼《黒銀》の総長である眞白の上のお兄さんと再会したり……。


「……」

 確か、部屋に連れ込まれてまたキスされたんだよね?

 で、時計塔のときと同じように気を失ってしまった。


 ……寝込みを襲われたりとかはしてないよね?


 一瞬不安がよぎる。

 でも本人もわたしの了承なく抱いたりしないと言っていたし、何より体に違和感とかはない。

 だから、うん。大丈夫なはず。


 とにかく今は何時なのか。

 今日も学校なんだから、朝になってるなら起きないと。

 そう思って重い腕から抜け出すために身じろぐと、まるで逃がさないとでもいうように抱きしめられる。


「っ!?」
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