シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
ノブに手をかけてみると開いていた。
この管理室も謎なんだよね。
管理人はいるらしいけれど、誰も見たことがないって言うし……。
それにどういうわけか、学園の校舎にある大事な資料室などの鍵はここで管理されている。
だからこうしてたまに持ち出して返さなきゃならないことがあるのだとか。
普通に職員室とかで管理するのが一番いいと思うんだけど……。
管理人がいるかいないか分からない管理室。しかも人がほとんど寄り付かない気味の悪い時計塔。
こんなところで管理して……セキュリティとか問題はないんだろうか?
まあ、問題ないから大事な鍵を置いてるんだろうけど。
なんにしてもわたしが考えることじゃないか。
そう思い直したわたしは、室内を見渡していくつかの鍵が並べて掛けられているところに近づく。
そこの空いている場所に持ってきた鍵を掛けた。
「これでOK。早く出よう」
怖い雰囲気を緩和させるように声を出して、わたしはすぐに管理室を出た。
でも、そのドアを閉めたところで異変に気づく。
――カツン
わたしが立てたものじゃない音。
――カツン
それが、一定のリズムを持って時計塔の1階に響いている。