シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「あ、わたしが入れてきましょうか? インスタントでいいんですよね?」

 どうせ朝食の準備もするし、と思って言ったんだけれど「でもどれがギンのマグカップかとか分かんないっしょ?」と返される。


 確かにそれもそうかと引こうと思ったけれど、「ま、いっか」と手招きされたのでついて行った。

「ちょうどいいから教えるよ。1回覚えとけばあとは分かりやすいだろうし」

 そうして食器棚の方に向かう。


 マグカップが並んでいる棚を指さしながら説明してくれた。

「三つ子のは3って書いてあるから分かりやすいだろ。あいつら3人の中ではこだわりないみたいで共有してるみたいだから、誰にどれ使っても大丈夫」

 いいのかそれで、とも思ったけれど、3人の見分けがつかない時点でどちらにしろそうするしかないんだろうと納得した。


「で、俺のは今使っててないけど木のマークを描いてる」

「木? ですか?」

「ああ、三杉って苗字だから杉っぽいマーク」

「あ、そういう……」

 ある意味分かりやすいのかもしれない。


「で、後の2人が岸本(きしもと)伊刈(いかり)っていうんだけど、岸本が苗字から取って本って字書いてる」

 そう言って横部分にでかでかと《本》と書かれているマグカップを指さした。

 うん、分かりやすい。
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