シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「伊刈の方はこれな。怒りマーク」

「あ、苗字の読みと掛けてですか?」

「そ。まあ、本人が怒りっぽいからってのもあるけど」

 笑って言う颯介さんにいいのかそれで、と思う。

 まあ、これもある意味分かりやすいのかな?


「あとたまに眞白も来るから、眞白のには白って字を書いてるんだ」

 と、下の方に《白》という漢字が書いてあるマグカップを差す。

 それを見ながら、眞白は本当に《黒銀》のメンバーなんだなぁと思った。


「で、ギンのだけど……」

 と、銀色のステンレス製のマグカップを手に取る。

「ギンのものは大体こういう銀色のものだよ。タオルとかそういう色のないものにはカタカナでギンって書いてある」

 個人のものはそんな感じで漢字やマークを付けているんだそうだ。


「ユキちゃんはカタカナでユキかな?」

 最後にそう言った颯介さんは、すぐにニヤリとからかうような笑みを浮かべて付け加える。

「それとも姫って書く?」

「……」

 姫って、確かギンの女って意味だよね。


「いえ、ユキで良いです」

 もう一々大げさに反応するのも疲れて来て淡々と答えた。

「そ? まあ、ユキの方が簡単だしな」
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