シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 そのあとは少し沈黙がおりて、2人でてくてくと歩く。

 そこにポツリと眞白が質問をしてきた。


「……あのさ、その……昨日は大丈夫だった?」

「え?」

「電話したとき兄さん『お前ももっと早く言えよ』なんて言うから……間に合わなかったのかと思って……」

 何のことかと思ったら昨日の説明の電話のことらしい。

 気にしてくれてたんだ。


「間に合ったから、大丈夫」

 流石に詳しく話すわけにもいかなくてそれだけを返す。

 実際、間に合ったといえばギリギリ間に合ったし。


「でもそう思うならもっと早く連絡してくれれば良かったのに。シャワー終えて戻ったらいなくなってたしさ……」

 連絡遅いんじゃないかな、って不満に思っていたことも思い出して文句を口にする。

「ごめん、忘れてたわけじゃないんだ。ただ、父さんをなだめるのが大変で……」

 そういえば義父さんからの電話で血相変えて出て行ったって颯介さんが言ってたっけ。

「何があったの?」

 聞くと、苦虫を嚙み潰したような顔で説明される。


「父さん、あの後ちょっと冷静になったみたいでさ……反省したみたいなのは良かったんだけど……」

 そして、眞白はものすごく嫌そうな顔をする。
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