シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 わたしの叫びを聞いて眞白は驚き、次いで安心したように笑う。

「そうだよな、ホントバカ親父だよ。……でも義姉さん、そんな風に言えるようになったんだ?」

「あ、と……口悪かったかな?」

 言い過ぎかと思ってちょっと反省するけれど、眞白は「いや」と否定する。


「それくらいがいいと思うよ。普通は思春期の女子って父親のことうざそうにするみたいだし。義姉さんが今まで父さんを良い様に見すぎてただけじゃないかな?」

「そう、かな?」

「うん。……でも昨日の今日でそんな風に思えるようになったのって……兄さんのおかげ?」

「へ?」

 突然ギンの話題になって不思議に思った。

 ギンのおかげって?


「いや、慰めてもらったのかなと思って」

「へ!?」

 眞白の言葉に大げさな程驚いた。

 慰めてもらった?

 いや、謝られはしたけれど慰められてはいなかったと思う。


 でも、求められて、キスされて……彼にとってわたしは必要なんだと思い知らされた。

 わたしを見ず、お母さんの影を求めた義父さんと同じ色の目は見なくていいと優しくふさいで。


 その求めに、優しさに、傷ついた心は確かに癒された気はしていた。
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